2009.2.28sat 第十堰の補修工事見学会に行ってきました。
第十堰上堰の補修工事は、今年で4年目。
詳しくはこちら→これまでの工事の現状 補修工法断面図 補修工事の様子
第十堰の青石組みは単に並べられているだけではありません。
水の流れが強く当たる上流側は石を立てに並べ強度を保つ(牛蒡積み)。下流側は堰の上を流れる水をゆるやかにし洗掘されないよう石を横に使う(平積み)。堰本体を保護するために水制や捨石を施す。など、様々な知恵と技術が見られます。
これを見極める技術師「石工」の指導のもと造られ、長年の間補修され、引き継がれてきました。
しかし今はその知恵と技を受け継いでいる人はたった2人しかいないそうです。
補修といっても、伝統工法での復元ではなく、青石を並べた隙間にはコンクリートを流し、捨石の部分には青石の変わりに小さな青石を飾石したコンクリートブロックが利用されています。
伝統工法で補修(元に戻す)ができない理由として、
・必要な青石を調達するには予算がかかりすぎる。
・伝統工法が受け継がれてきていないので、国交省にはそれをやる技術がない。
やれる人がいない。
ということでした。
また、
・この補修工事に関しては、生態系の調査はしていない。
・コンクリートは表面部分だけ使用、コンクリートブロックも大きな石と同じなので
透過構造には全く支障がないという見解で、
伝統工法ではなく、コンクリートを使って補修した場合、透過構造がどれだけ損なれるのかは、
割合を数値で出すなどの検討はしていない。
・4年目(今年)で補修はひとまず終わり。
・水制に関しては補修の予定はなく、これから調査をして必要かどうか検討する。
(上堰に関してはまだ調査をしていない。補修が必要かどうかは国交省が判断)
・護岸の石積み(工法)に関しても、その技術は失われつつあり、
やれる人がいなくなった。(引き継がれていない)
という点が気になりました。
ここへはこの7年間、毎年子どもたちを連れてやってきていました。
水の流れを考えた石の組み方、青石の間から透過してくるきれいな水、
それを直接見て触れて、先人の知恵と工夫、その素晴らしさを子どもたちに伝えてきた場所が、
変わってしまったことは、ショックでした。
8年前初めてここを訪れた時のことを今でも鮮明に覚えています。
まだ一部しか現れていなかった青石畳はみんなから青の広場と呼ばれ、
水は底まで透き通るほど青く、感動とともに見た瞬間に飛び込みたくなりました。
それも今は袋詰め玉石で埋め尽くされてしまっています。
技術が引き継がれて来なかったと同時に、
その価値についても、鈍感になり、人々の中から失われつつあるのではないかと思いました。
第十堰には他にはない構造や伝統技術がたくさん残されており、文化的歴史的価値があることを、日本土木学会が報告書をまとめているほどです。日本一であるものもたくさんあります。
あらためて伝承すること、引き継いでいくことの大切さを感じました。
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